お金のお話 番外編
銀行ができるまで
とらごろがベンチのところに歩いてきました。
あれ、ちょうろいないなぁ。
あ、今日はちょうろいないよ。
何か用事があるって言ってたよ。
あれ、くろたろがここにいるのは珍しいね。
ちょうろに頼まれたんだ。
とらごろは今ちょうろにお金のお話聞いてるんでしょ?
そうなんだ!
お金のお話、面白いよ。
ボクも昔聞いたんだ。面白いよね。
ちょうろからの頼みごとはそのことなんだよ。
え、お金のお話のこと?
そうそう、とらごろに「銀行ができるまで」のお話をしてやって欲しいんだって。
ボクは一度聞いて自分なりにも調べてたんだ。
そうなんだ!
くろたろからお話聞くのもおもしろそうだね!
そう言ってくれるとうれしいよ。
今、お金のお話はどこまで進んだかな?
えーっとね。
【借金ぐるぐる競争ゲーム】の話をしてるよ。
【借金ぐるぐる競争ゲーム】か。
昔ちょうろに聞いた時は、
【借金ぐるぐる地獄ゲーム】って言ってたよ。
言い方変えたんだな。
このゲームには良い面と悪い面、両方あるからな。
あの当時は猫にとっては悪い面がよく見えたんだ。
ちょうろは怒りながら話してたよ。
「このゲームは環境を破壊して、猫の仲間たちもどんどん犠牲になっていく!」
ってね。
そうなんだね。ちょうろの意外な面を知れたよ。
ごめんごめん、話がずれちゃったね。
銀行ができるまでの話をしようか。
お金と言えばお札やコインだよね。
お札やコインが使われる前は、何が使われてたと思う?
えーと、お米とか野菜とか魚とかを直接交換してたのかな?
そういう時代もあったかもしれない。
けど、お米とか野菜、魚とかは、ちょうど相手が欲しければうまく交換できるけど、、、
いろんな人と便利に交換するのは難しいよね。
だから、みんなが欲しがる貴重なものが使われていたんだ。
じゃあ、特選まぐろ缶みたいなやつだな!
ふふ、そうだね。猫にとっては特選まぐろ缶かもね。
人間にとってはね、金や銀、ガラス細工とかの宝石類などが使われるようになったんだ。
貴重品だし美しいからみんなが欲しがったんだ。
そうか。人間にとってはそういうものが貴重なものだよな。。。
金や銀は、持ち運びが楽で劣化しにくいし、加工もできるからうってつけだったんだ。
交換するときに大きいと大変だもんね。
けど、実はお米なんかは最近までお金として使えたんだよ。
みんな欲しがるし、容器に入れたら持ち運べるし、測りやすいからね。
要するにお金は、
【価値を測ることができる】
【みんなが欲しがる】
【持ち運べる】
ものであればよかったんだ。
たしかにそれならいろんな人と交換できるもんね。
お金の歴史はそのまま人間の歴史なんだ。
今は、全部を振り返るわけにはいかないから、すこし話をすすめるよ。
銀行ができる少し前の時代を見てみよう。
そのころは、王様や力のある貴族などが金や銀などでコインのお金を作ってたんだ。
王様が、自分の領地の金山や銀山から採掘した金や銀でコインを作っていたんだ。
昔はそれぞれの王様たちがお金を作っていたんだよ。
みんなが別々のコインを作ってるってことは、交換する時に面倒だね。
たくさんの単位があるんだもの。
そうなんだ。今より面倒だったと思うよ。
他にも問題があったんだ。
コインはよく偽造されちゃったんだ。
ちょっと安い金属をまぜて鋳造しなおしたらコインを増やせちゃうよね!
今でも偽札を作る人はいるけど、昔はもっとたくさんいたんだ。
それで、コインにちゃんと金や銀が含まれているか、つまり本物のコインかを確認する必要がでてきたんだ。
そこで登場するのがゴールドスミス(金細工師)という職業の人たち(ゴールドスミスは職業名)。
ゴールドスミスは、コインに金や銀がどれくらいの割合入っているのかを調べ、それが本物かどうかを証明することができたんだ。
彼らはコインを預かり、それが本物であるか鑑定して、証明書を発行したんだよ。
みんなは、コインの交換と一緒にその証明書を添えるようになったんだ。
証明書があるとコインの信頼性が高まるからね。
たしかに証明書があると安心だね。
ゴールドスミスのところには、コインがたくさん集まってきたんだ。
みんなコインが本物か確認して証明書を発行してもらいたかったんだ。
そこで、ゴールドスミスはコインを預かる仕事もはじめたんだ。
コインを預かって金匠手形という預り証を発行するようになった。
ゴールドスミスは大きな金庫としっかりとした番人を雇っているから、コインが本物である証明と、安全に預けておけるから、一石二鳥だ。
ゴールドスミスの金匠手形が多く出回るようになってきたころ、 みんなが気づきはじめたんだ。
多くのコインで支払う時には、金匠手形を交換したら楽になる。
紙はコインよりも持ち運びやすくて便利だし、
ゴールドスミスのところに行けばいつでもコインと交換できるんだから。
ということで、コインの替わりに金匠手形が交換されるようになっていったんだ。
これが現代の紙幣と銀行のはじまりだよ。
あ、そういうことだったんだね。
じゃあ、100円玉や500円玉は昔のコインの名残りなのかな。
そうかもしれないね。
この時点でお金は、それ自体に価値があるモノからただの紙に変化したんだよ。
ただし、もちろんこの紙の背後にはコインという裏付けがあるけどね。
さて、さらにここから話をすすめてみよう。
ゴールドスミスのところには膨大な金が集まったんだ。
金匠手形は便利だし、大切なコインはゴールドスミスが管理して守ってくれる。
みんながゴールドスミスのところにコインを預けたんだ。
ゴールドスミスは金の鑑定料と保管料で大儲けしたんだよ。
そんな中、ゴールドスミスのところにコインを借りに来る人たちが現れはじめたんだ。
彼は大儲けしたから当然だね。
ゴールドスミスはコインを貸しはじめたんだ。
そうしているうちに彼は気づいたんだ。
「みんなが一斉にコインを引き出しに来ることはない。なぜなら、みんな金匠手形で交換しあっているから。」
ゴールドスミスは自分の財産ではなく、金庫にあるみんなのコインを貸しはじめてしまったんだ。。。
そうやって、人にコインを貸しているうちにゴールドスミスのところにはさらにコインがたくさん舞い込んできた。
貸し出しの手数料で大きな儲けをだしたんだ。
そのうち、ゴールドスミスはこう考えた。
「私がいくらのコインを持っているか実は誰も知らない。 それなら、新しい金匠手形を作っても誰にもばれない。」
ということで、ゴールドスミスはお金を借りに来た人に金匠手形を発行するようになったんだ。
!?!?
それは詐欺だよ!?
そうだね。。。
これって、今の銀行のルールととても似てないかな?
ゴールドスミスは、自分が持っているコインを減らすことなく金匠手形を発行したんだよ。
ほんとだ、今のお金が増える仕組みと同じだ!
けど、そんなことしたらみんな詐欺に気づいたんじゃない??
そうだね。人々は気づきはじめた。
ほんとにゴールドスミスのところにコインが保管されているのか?
金匠手形が妙に多く出回るようになっていたから。。。
多くの人がゴールドスミスのところに詰めかけたんだ。
本当にコインがあるのか確認したくて引き出そうとしたんだよ。
すると、、、
なんと、ゴールドスミスのところにはちゃんとコインがあったんだ!!
どういうことだと思う?
え、、、!
あったの!?
実は、ゴールドスミスはその時代では珍しい国際ネットワークを持っていたんだよ。
情報の行き来が今とは比べものにならないくらい少なかった時代、
そんな時代にゴールドスミスは国をまたいで同じ銀行業をしながら情報を交換したんだ。
だから、みんなが疑って取り付け騒ぎが起こりそうだということを彼らは知っていたんだ。
同じ銀行業仲間が融通しあって、コインを用意することができたわけだよ。
なんという悪知恵、、、
そうだね。
まさかそんなことが起こっているいるとはみんな知らなかっただろうね。
ゴールドスミスは取り付け騒ぎを乗り切ったりしているうちに、もはや王や貴族よりも強大な権力を手に入れていたんだ。
もちろん、この時に使われていたゴールドスミスの紙幣はコインという裏付けがある建前だったんだ。
けれど、みんなは紙幣で交換することが多かったため、 一度にコインをひきだされない限りは紙幣を刷ることが可能になってしまったんだ。
ゴールドスミスは、紙を刷るだけでどんなモノでも交換できる力を手に入れてしまった。
なんでも手に入る状態だね。
ほとんどの人は紙幣はコインの引換券だと思っていたんだけど、
紙幣は本当は数字でしかないということをゴールドスミスはわかってたんだ。
銀行ってやっぱりすごい悪者だよ。
みんなに信頼されているから豊かになったのに、それを裏切ってお札を発行したんでしょ。
そうだね。そうかもしれない。
けれど、ちょうろも言ってたと思うけど、当時の背景も考えた方がいいと思うよ。
ゴールドスミスは王様や貴族が支配している時代が嫌だったんじゃないかな。
時代の流れから考えると、血縁と力で支配する時代から、
頭を使ってうまく稼ぐものが支配する時代に変わったと言えるんじゃないかな。
たぶんそのころは今から考えると合理的じゃないことがたくさんあったと思うんだよ。
ゴールドスミスたちが大きな力を持った結果、ルールをちゃんと作ってみんなで競争ゲームをすることになったんじゃないかな。
ほんとのところはボクにもわからないけど。。。
ただ、一つ言えることは、このルールだとみんなが一気に豊かになっていく方向を向いてるんだ。
格差を拡大させ続けながら進むという矛盾を抱えながら、、、
金利のブースターがあるのもそういう理由だったのかな。
みんなが得した気持ちになる心理をうまく使ったのかもしれない。
ただ自分の得だけを考えたのかもしれない。
実は多くの宗教では金利は禁止されていたらしいんだ。
金利があると必ず誰かから奪ってでも稼ぐ必要がでてくるからね。。。
その考え方は宗教が目指す平和とは相容れないんだ。
ちょうろが言ってたんだけど、王様や貴族の時代が終わったら、政府を持つ国が現れたんだよね。
そうなんだ。
今みんなが思い浮かべる【国】っていうのはそのころ作られたと思うよ。
それとともに、中央銀行が国のお金の管理をする仕組みも作られたんだ。
中央銀行の仕組みは複雑だから、今回は詳しく話ができないけど、、、
たくさんある一般の銀行をまとめるような役割があるんだ。
一般の銀行がお金を貸し出してお金を作ることは変わらないよ。
銀行がどういうふうにはじまったのかだいたいわかったよ。
けれど、それと同時に【国】のことも考えなきゃいけないみたいだな。。。
そうだね。
政府が税金を集める仕組みも考えないといけないし、
国と国との関係も考える必要があるんだ。
昔は奴隷制度や女性に対する差別、あらゆる考え方が今と違ったんだ。
歴史が進むにつれて善いことや悪いことの捉え方が変化していると思うよ。
現代になるといろんなものがとても複雑に絡みあっている。
そうだね。
ボクにはそんな複雑なことを考えるの難しいな。
たしかにとても難しいと思う。
けどね、これだけ複雑になってきた時には、その大元をたどることは大事だと思うよ。
種をまいたら、芽がでて、小さな木になって、大きな複雑な木に成長するでしょ。
どんな種をまいたのかを調べることが大元をたどるということだよ。
ちょうろに言わせると、元はどんなルールのゲームをやってたのかを思い出す必要があるんだ。
どんどん別のゲームを重ねて、何をしたいかわからなくなっていることがありそうだものね。
まだまだ話足りないことはあるんだけど、今日はこのくらいにしようか。
あ、そうだ、最後に一つだけ言わせてね。
今日はわかりやすいように、お金が金や銀からお札になって銀行が作られたという話をしたけどね、、、
実は銀や銀のコインの時代だって、お札になった時代だって、お金の本質は数字という意味ではかわらないんだよ。
コインの時代だって、お札がはじまった時代だって、結局は数字を使って交換していたんだ。
ただ、コインの時は金や銀の量と数字が結び付けられていただけなんだ。
銀行がはじまった時、たしかに詐欺的な方法が出発点だったんだ。
けれど、よく考えるとお金が数字でしかないっていう本質に近づいたとも言えると思う。
このことがわかると、随分すっきりすると思うよ。
なんかすこしずつわかってきた気がするよ。
ボクら猫から見たら、【価値の交換ゲーム】のルールを少しずつ変えてきただけに見えるもんね。
そうだね。
今度は別の話もしたいな!
うん、また話しよう!
くろたろありがとう!!
お金のお話 番外編
銀行ができるまで
王様が金や銀のコインを発行していた
偽コインが多く出回った
ゴールドスミスはコインが本物なのかを鑑定できた
ゴールドスミスのところにコインが多く集まった
ゴールドスミスはお金を預かり、貸し出す仕事をはじめた
証明書が金匠手形に発展し、金匠手形がコインの替わりに使われるようになった
ゴールドスミスは自分の財産より多く金匠手形を発行するようになった
現代の銀行の仕組みが出来上がっていった
さて、皆さんはどう感じたでしょうか?
次回はちょうろが戻ってくるはずです。。。