お金のお話 その5
借金ぐるぐる競争ゲーム
とらごろが暗い顔をして歩いてきました。
ちょうろはいつものベンチからとらごろを見ています。

ちょうろセンセ
今日もお金のお話を聞きたいんだけど、、、
うかない顔をしておるのぉ。


そうなんだ。
この前、ちょうろは【借金ぐるぐる競争ゲーム】って言ったでしょ。
そのことを考えてたらしんどくなっちゃったんだ。。。
そうかそうか。
無理もないのぉ。
とらごろは優しいからな。


うん。考えたらしんどくなるよ。
銀行はお金を貸し続ける競争をして、
借りた人は急いで返す競争をしてるんでしょ。
両方が競争し続けないとやっていけないんだもの。
競争って誰かが負けるから誰かが勝つんでしょ。
ボクは遊ぶのは好きだけど、競争しなくてもいいと思うんだ。
まさしくそうじゃな。
わしが今日言いたかったことを先に言ってくれたわい。


今の世界は【借金ぐるぐる競争ゲーム】の中にいるんでしょ?
そうじゃな。
わしはそう思うよ。


みんな無理やり競争させられているってことでしょ。
そうじゃな。この仕組みの中にいると嫌でも競争させられる。
わしはこのゲームを別のゲームに変える時期だと思っておる。
このゲームは人間が作ったルールで行われているのだから、
もちろん変えることもできるのじゃ。


あ、けど、暗いことばかりに目をむけていてもだめだったんだね。
よいところもあるはずだ。
そうじゃな。
良いところはすぐわかるじゃろう。
それはなんと言っても便利さじゃ。
とらごろが特選まぐろ猫缶を食べられるのは便利さのおかげじゃ。
特選まぐろ猫缶がとらごろに届くまで、いったい何人の人が関わってるだろうか?


考えたことなかったな。
漁師さんがいて、市場の人がいて、それを買いつける工場の人がいて、
工場で猫缶を加工する人がいて、猫缶を運ぶ人がいて、、、
あ、猫缶のデザインを作る人もいるな。
作られた猫缶を運ぶ人がいて、それをスーパーに並べる人がいて、
スーパーでレジを打つ人がいて、猫缶を買う人がいる、、、
ちょっと考えただけでもすごい人が関わっているね。
漁師さんの船は誰が作っておる?
猫缶の容器のブリキ缶は誰が作っておる?
猫缶を運ぶ人のトラックは誰が作っておる?
たどっていけば行くほど、無限に広がってしまうのお。


すごいなぁ。
みんなが働いているからボクも猫缶を食べられるんだね。
そう考えるととてもありがたいな。
そうじゃ。
この仕組みはものすごく成功してきたと思うぞ。
今の多くの人間は昔の貴族や王様よりも贅沢をしているとわしは思う。


けど、その反対に競争で負けてしまう人もたくさんいるということかな。
そうじゃな。
ただ負けてしまう人が多くなるだけでなく、地球の環境へのダメージも大きい。
お金=数字で交換しにくい【価値】が置き去りになっていく。。。
あらゆるところで歪みが出ておるのも事実じゃ。
お金の仕組みがすべての原因ではないと思うが、大きく大きく関係していると思うぞ。
すこし話が脱線してしまったのお。
こういう話はまた今度じっくりしようかの。
今日は、【借金ぐるぐる競争ゲーム】についてもうすこし考えてみようか。


そうだね。
新しい仕組みを考える前に今の仕組みをもう少しちゃんと知っておきたいし。
【借金ぐるぐる競争ゲーム】をもう一度まとめなおしてみようかの。
1.銀行がお金を貸す
銀行は人にお金を貸して、その分のお金を作る。
しかし、作られたお金は返済されたらゼロに戻るから金利という手数料で稼ぐ。
2.借りた人は急いで返す
お金を借りた人は、未来の価値を今使えるようになるから、一気にいろんなものを手に入れることができて便利になる。
ただし、できるだけ早く返さないと大きく損をしてしまうから、よりたくさん、効率的に働いて銀行に返済する。
3.お金が足りなくなる
銀行が稼ぐ手数料は、増えたお金と関係ないので元のお金から稼ぐことになる。
金利は時間が経つと増えて、元からみんなが持っているお金がどんどん減って銀行に入っていく。
やがて、みんなが持っているお金が足りなくなってしまう。
4.銀行はさらに貸し、借りた人は急いで返す
銀行は、自分が稼ぐお金を稼ぐためにも、みんなが持っているお金が足りなくならないためにもどんどんお金を貸し続ける。
お金を貸すと一時的にお金が増えるので、なんとかやりくりできる。
これが【借金ぐるぐる競争ゲーム】じゃ。


ちょうろ、ありがと。
あらためて整理すると、銀行とお金を借りる人が一対となってぐるぐるまわしているのがわかるね。
そうじゃな。どちらも同じ方向を向いておる。
さっきも言ったが、これは【価値】を加速的に増やしていくんじゃ。
モノが少ない時代にこの仕組みはものすごい威力を発揮した。
そのころ大切だった(【価値】あるもの)は、
食べ物や着るものなどのモノだったのじゃ。
モノが増えるとみんなが豊かになるからのぉ。
わしは、金利はブースターのようなものだと思っておる。
ブースターは加速装置じゃ。
ブースターボタンを押すと走っている車が一気に加速する。
それと同じじゃ。
一気に【価値】を増やすとたしかに便利になるんじゃが、
競争が激しくなってついていけなくなる人もたくさんでてくるんじゃ。


みんなが一気に豊かになるために、ブースターボタンを押したってことか。
その結果、みんなが豊かになったけど反対ではついていけなくなる人もたくさん生み出してしまったんだね。
そうじゃな。とても便利になった。
実はな、これまでわかりにくいから言っていなかったが、
金利は銀行だけがとるものではないのじゃ。
銀行にお金を預けた人にも金利という利益が支払われるのじゃ。
この要素も付け加えるとどうなるかな?


えと、お金をたくさん持っている人には金利が支払われるってことだね。
それならお金を持っている人は時間が経てばどんどんお金持ちになるね。
逆に、お金を借りている人は時間が経てばどんどんお金を多く返さないといけない。
え?
じゃあ、お金を持っている人ばかり得するんじゃない?
そうじゃな。
銀行がなぜそんな仕組みを作ったのか、、、
銀行はゼロからお金を作り出しても何も損してないんじゃったな。
しかも、そこに金利という手数料をとる。
それだと銀行は稼ぎたい放題だと言えるじゃろ。
わしは銀行がこう言ってると思う。
「みんなも銀行にお金を預けたら、金利がつくよ。
そしたらみんなもお金を持っているだけで稼げるよ。
銀行だけが金利で稼いでいるより公平でしょう。」


、、、
何かおかしいと思うよ。
わしもこれはとてもずる賢いやり方だと思う。
難しく言うと、みんな共犯だから問題ないと言っているようにも思えるのじゃ。
お金はとても魅力的じゃろう?
ありとあらゆる【価値】と交換できるんじゃ。
しかも、自然界のモノは腐るのにお金は減ることがない。
これだけでもすごい。
さらに、銀行に預けると、時間が経つにつれ増えていくようにしたのじゃ!
お金の魅力をさらに増やすことで、みんながお金をもっと欲しがるようになる。
自分たちは安泰で、みんなも同じ甘い汁を吸えるんだぞと言ったわけじゃ。


銀行ってやっぱり悪いやつに見えるよ。。。
悪魔的に頭が良かったのかもしれないな。
けれど、やはり時代もあったのかもしれないぞ。
銀行ができた当時は、王様や貴族が支配する世の中じゃった。
王様や貴族たちは元々優秀だったり勇敢だった人たちかもしれない。
そういう時代が長く続いていたのじゃが、時が経つと変わるじゃろう。
王様の子どもが王様になり、貴族の子どもが貴族になる。
優秀だから、勇敢だからリーダーになるのではなく、その子ども、孫だからリーダーになる。
前も言ったがゲームは変化して重ねられていくのじゃ。
銀行ができた当時は、王様や貴族たちのゲームが腐りきっていたのも事実じゃ。
銀行は力をつけて、王様や貴族たちに変わって新しいゲームをはじめたと思うのじゃ。
銀行が関わるゲームは、これまで話してきた【価値の交換ゲーム】じゃ。
すくなくとも、このゲームのルールはしっかりしておる。
競争しなくてはいけないが、その分すごいスピードで豊かになるゲームじゃ。
生まれに関係なく、競争に勝てば社会で認められる世の中じゃ。
銀行は新しい仕組みの中で、自分たちの力を維持しながら社会が豊かになるゲームを考えだした。
わしにはそう思えるのじゃ。


たしかにそうかもしれないね。
けど、持っている人はより多く持ち、持っていない人はどんどんなくなる。
そんなゲームは続かないんじゃないかな?
持ってない人たちはすっからかんになっちゃうじゃない?
そうじゃな。
それだと続かない。
だから、政治というゲームで補うようになったのじゃと思う。
それまで王様や貴族が人々から年貢をとっていたのじゃが。
王様や貴族の代わりに、国がみんなからお金を集めて配り直すのじゃ。
そうすることで、より多く持つ人と持っていない人の差を少なくできるのじゃ。
だが、この話は長くなりそうじゃから、またの機会にしよう。


お金の話って、いろんなところとつながっているんだね。
考えることが多くて大変だな。
そうじゃ、今あるいろんなゲームは何重にもかさねられてきたからのぉ。
複雑なんじゃ。
だから、単純に考えるだけではだめなんじゃ。
それはさておき、ここまでの話でとらごろはどう思ったかのお?


うーん。
お金のことはだいぶわかってきたけど、やっぱりボクにはなんでこんなゲームをやりたいのかわかんないなぁ。
人間がしていることがわからなくなってきちゃったよ。。。
わしら猫には根本的にわからないことじゃな。
一番はじめの【所有ゲーム】もしてないんじゃからな。。。
だから人間を観察するのが面白いわけじゃがな。
今日はここらへんにしておこうかの。
最後にすこしだけ言わせておくれ。
今回は銀行がすごく悪いことをしてきたように思えたかもしれん。
たしかにそういう部分もおおいにあると思うが、、、
けれど、王様や貴族の時代が長く続いたらどうなるか?
王様や貴族がどうなったのか思い出してほしいのじゃ。
銀行が作った【借金ぐるぐる競争ゲーム】はかなり長い間続いてきておるぞ。
では、銀行は今どうなっておるのかな?


腐っちゃう!!
ははは、そう焦らずともよいぞ。
どうなるかは今度話そう。

お金のお話 その5 簡単まとめ
【借金ぐるぐる競争ゲーム】
銀行と借り手が一緒に回し続ける
金利がブースターになって、回転速度が上がる
その結果、すごい速度で【価値】の交換ゲームが進む
お金を銀行に預ける人も金利を得られる
持っている人がさらに持ち、持ってない人は失う
お金の魅力が増し、みんながさらに欲しがる
お金を使った【価値の交換ゲーム】にみんなが夢中になる
その結果、すごい便利な世の中になる
反面で、必ず負ける人がいる
格差が拡大する
このゲームを何年も続けてきたのが現在
現在はいったいどういう世界になっているのか、、、
次回はそれがわかります、、、
と言いたいところですが、次回は番外編をお届けいたします。