お金のお話 その4
銀行が金利をとる世界
ちょうろがいつものベンチでくつろいでいました。
とらごろが何かをくわえてちょうろのところにやってきました。
ちょうろセンセ、これ食べて。
さっき見つけたんだ。
それは何じゃ?
お、煮干しか。わしの大好物じゃ。
ありがとう。
今までいろんなことを教えてもらったお礼だよ。 今日もたくさん教えてもらわなきゃ。
いや、わしこそ楽しませてもらっておるぞ。
そういえばこの前は宿題を出したんじゃったの。
覚えておるかの?
うん、もちろん覚えてるよ。 銀行がお金を貸す時に金利をとっているけど、
それがみんなにどういう影響を与えるかってことでしょ?
そうじゃったな。
とらごろはどう考えた?
えっとね。 まず、銀行がお金を貸すでしょ。 そこに金利があると、みんなができるだけ早く返そうと思うんだ。 そして、早く返すためにはもっと働いたり、もっと効率をあげると思うんだ。 だから、みんながすごいスピードで豊かになっていくんじゃないかな。 今までよりもたくさんモノやコトを交換することになるし、
できるだけ無駄を省こうと思うからね。
そうじゃの。
たしかにそういうふうになるじゃろう。
けれど、それだといいことばかりに見えるがのぉ。
何か良くないことが起こるとは思わなかったかい?
あ、すこし考えたよ。
みんなが急いでお金を返そうとしても、お金が返せないこともあると思ったんだ。
病気になったりして、働けなくなることもあるかもしれない。
上手に稼げた人はいいけど、稼げない人はどうなっちゃうんだろう。
そうじゃの。
本当にそうじゃ。
とらごろ、何かを考える時はいろんな面から考えるのが大切じゃ。
便利な面があれば、その逆もある。
とらごろは素直だから両方がちゃんと見えておると思うぞ。
物事の捉え方はとても大切なことだから、また今度その話をしようかの。
そうだね。その話も聞きたいな。 自分で考えてみるといろんなことに気づいたよ。
そうじゃろ。自分なりに考え続けるのは楽しいぞ。
さぁ、そしたら今度はわしが考えたことを聞いてくれるかの。
銀行はお金を貸す時に金利をとるんじゃったな。
貸すお金はゼロに戻るお金じゃから、銀行は手数料で儲けるしかないのじゃ。
金利という手数料をとるっていうことは、時間が経てばたくさんお金を返してもらえる。
借りてる人たちはできるだけ早く返そうとするから、たくさん働いたり、効率を上げたりして返そうとする。
これまでわしが使ってきた言葉で言うと、
より早く、より効率的に【価値】を造って返済にまわすのじゃ。
まさにとらごろが言ったとおり、社会はすごい速さで豊かになっていく。
実際に、人間は急速に豊かな社会を作り上げてきたのじゃ。
けれど、その反面で大変なことも起きるぞ。
大変なことはたくさんあるのじゃが、わしが一番問題だと思っていることがあるんじゃ。
何だと思うかね?
それってボクが考えた、お金が返せない人がでてくるってこと?
そうじゃ、そのことはとても重要じゃ。
とらごろはお金を返せない人もでてくるって言ったが、
実はこの仕組だと必ずお金を返せない人がでてくるのじゃ。
【価値の交換ゲーム】で、普通にモノ・コトを売り買いしていてもお金は減らなかったじゃろ?
銀行が作り出すお金は、増えてもゼロに戻るからチャラになるな。
けれどな、金利というお金は手数料なわけじゃ。
手数料というのは、ゼロに戻るお金と関係ない、つまり元からのみんなのお金から稼いでくるしかないのじゃ。
ん?どういうこと?
すこし例をだしてみようかの。 10人の人がいて、それぞれ1,000円持っているとしようか。 10人が1,000円だからお金の合計は10,000円じゃな。 普通にモノ・コトを売り買いしているだけでは合計は変わらない。 ただし、お金を借りたらその分のお金が増えるんじゃったな。 Aさんが銀行に1,000円借りたとしよう。 すると、お金の合計は11,000円になる。 ただし、この増えたお金1,000円は銀行に返すとゼロに戻るのじゃな。 さて、1ヶ月10%の金利があるとどうなるかな?
そのうちの一人が銀行家じゃ。
Aさんはがすぐにお金を返せたら、増えたお金はゼロに戻るだけだな。 Aさんが一ヶ月後にお金を返すことになったら、1,100円返さなきゃいけないんだ。 あれ、この100円はどこから持ってくるんだろ??
その100円はみんなが元から持っているお金で払わないといけないのじゃ。
銀行が稼ぐお金は手数料じゃったろ?
手数料っていうのは普通のモノ・コトと同じ交換なんじゃ。
ではな、もしAさんがお金を返すのに1年かかったらどうなるんじゃ?
え~。計算苦手だなぁ。。。
前回を思い出してごらん、
とらごろは銀行から1,000円借りた。
1ヶ月以内になら、1,000円そのまま返すだけでよい。
1ヶ月過ぎたら、1,100円を銀行に返す(1,000円+100円=1,100円)。
2ヶ月過ぎたら、1,210円を銀行に返す(1,100円+110円=1,210円)。
3ヶ月過ぎたら、1,331円を銀行に返す(1,210円+121円=1,331円)。
4ヶ月過ぎたら、1,464円を銀行に返す(1,331円+133円=1,464円)。
・・・
12ヶ月過ぎたら、3,137円を銀行に返す(2,852円+285円=3,137円)。
12ヶ月なら3,137円を銀行に返さないと行けないのじゃよ。
そうだった! え、それだと、、、 3,137円のうち1,000円はゼロに戻るけど、2,137円はみんなのお金(10,000円)の中から稼いでこなきゃいけないの?
そうなんじゃ。 みんなそもそもが1,000円しか持っていなかったのじゃぞ。 2,137円ということは、2人が完全に無一文になってしまう計算になるぞ。。。
え、銀行はめちゃくちゃなことをしているんじゃない? 銀行は手数料って言うけど、ひどすぎるよ。 こんなのみんなが怒るからできないよね?
わしにもそう思えるぞ。
けれどな、今も実際にこのルールでゲームを続けているのだよ。
どうやってそんなことできているの?
本当に摩訶不思議な数字ゲームじゃ、、、
銀行はな、別の人にもお金を貸すのじゃ。
そしたらお金が一時的に増えるじゃろ?
お金が増えたらそのお金で借金を返してもらったらいい。
けれど、返してもらったらまたお金が減ってしまうな。
だから銀行はまた別の人にお金を貸すのじゃ。
こうやったらゲームは続くのじゃろう。
え、そんな無茶苦茶でいいの? そんなことやってたら、ぐるぐると永遠にやり続けなきゃいけなくなるよ。
そうじゃ、無茶苦茶だとわしも思う。
時間が経てば立つほど金利は膨らむ。
一方で、お金を返してもらうと増えたお金はゼロに戻ってしまうのじゃ。
銀行は金利を稼ぐためには貸し続けないといけない。
借りた人はなんとしてでも急いで返そうとする。
銀行は返されると自分が稼ぐはずのお金自体が消えてしまうから、
さらに貸してお金を増やさないといけない。。。
お金は、【価値の交換ゲーム】の数字と言っておったな。
今はその上に【数字集めゲーム】が乗っかっておるとわしは言った。
だが、わしはこのゲームが本当は【借金ぐるぐる競争ゲーム】だと思うぞ。
このゲームのルールは簡単じゃ。
銀行は貸し先をどんどん見つけてお金を作りだす競争をする。
借りた人はたくさん働いて、効率化して急いでお金を返す競争をする。
こんなゲームをしてみんなは何がしたいの?
とらごろはやっぱり素晴らしいぞ。
なぜこんなゲームをしているのか、考えている人間はあんまりいない。
そもそもが、お金の増える仕組みを知らないから無理はないがの。
お金という数字は、実際のモノ・コトと結びついた数字じゃったろう。
このゲームは競争すればするほど、【価値】が異様な速度で増えるゲームなんじゃ。
しかし、その【価値】は、お金という数字で測れる【価値】でしかないのじゃが、、、
みんながこのゲームをやると、みんなが持っている【価値】がすごい速度で増えるということじゃ。
とらごろはその意味をきちんと説明できるかい?
うーん、また【価値】に戻ってきたな。 すこし考えさせてほしいなぁ。
そうじゃな。今回はまた難しい話になってしまったからのお。
わしが10年以上も考えてきたことじゃ。
いきなり言われても頭がパンクしてしまうの。
今日はここまでにして、すこし昼寝でもしようかの。
そうだね。 今日はいい天気だし、日向ぼっこしながら昼寝しよう。
とらごろはそう言うと同時に眠りに落ちていました。
ベンチの上で気持ちよさそうに眠るとらごろうはとても幸せそうです。
お金のお話その4 簡単まとめ
銀行が手数料としてお金をとるとどうなるか?
みんなが急いでお金を返す。
返せない人も現れるので金利がふくらむ。
ふくらんだ金利は、ゼロに戻るお金ではない(手数料だから普通の交換と同じである)。
みんなが元から持っているお金から稼いでこなければいけない。
借金のお金はゼロに戻るから、
みんなが元から持っているお金が足りなくなってしまう。
銀行は、自分が稼ぐためにはお金を貸し続ける。
借りた人は急いでお金を返し続ける。
ちょうろはこれを、【借金ぐるぐる競争ゲーム】と呼ぶ。
このゲームは、【価値】が異様な速度で増えていく。
みんなが競い合って【価値】を増やしていくゲームである。
けれど、その【価値】は数字のお金で測れる【価値】である。
これはいったいどういうことなのか?
次回は、さらに一歩進みましょう。
持っている人がさらに持ち、持っていない人はさらに失う??
すこしややこしいかもしれませんが、おつきあいください。。。